勉強ノート, 古典

【傷寒論】太陽病 中編

第十八章 葛根湯

太陽病、項背強几几、無汗悪風、葛根湯主之。

たいようびょう、こうはいこわばることきき、あせなくおふうするは、かっこんとうこれをつかさどる。

太陽病で、項から背にかけて強ばり動かしにくく、汗なく悪風する者は、葛根湯が主治である。

<構成生薬>葛根湯=葛根、麻黄、桂枝、生姜、甘草、芍薬、大棗

<言葉の意味>

項背強几几…項から背にかけて強ばること。几几(きき)は机机と同じで、重くて動かしにくいの意。几几を八八と書いて「しゅしゅ」と読ませている人があるが、この八八は羽の短い鳥がまさに飛ばんとして羽をひろげて首をのばしたかたちであるから、首の凝る状態をいったものだと説明している、ところが困ったことに、金匱要略に、「太陽病、その証備わり、身體強ばること几々然」という章がある。身體強ばる時に首をのばすというのはおかしい。それで私(著者:大塚敬節先生)は几几(きき)とよみ、重くて動かしにくい意にとる。

悪風…悪寒の軽症で、暖かくしていればぞくぞくしないが、風に当たったりすると寒気を覚える。

(悪寒との違い…悪寒とは俗にいう寒気で、布団をかぶって寝ていても、ぞくぞくと寒いこと。)

<解>

太陽病で、後頭部より項部、背、あるいは腰のあたりまで強ばる。また強ばるばかりでなく、この部に疼痛を訴え、発熱しているのに汗が出ず、悪風するものは葛根湯が主治である。(悪風をいうからには、発熱を伴うものと考えねばならない)

(桂枝湯や桂枝加葛根湯が表虚証であるのに対し、これから出てくる葛根湯、麻黄湯は表実証。)

第十九章 合病

太陽與陽明合病者、必自下利、葛根湯主之。

たいようとようめいのごうびょうは、かならずじげりす、かっこんとう これをつかさどる。

太陽病と陽明病の合病の者は、必ず自下利する。葛根湯が主治である。

<言葉の意味> 

合病…合病には、“太陽と陽明の合病”、“太陽と少陽の合病”、“少陽と陽明の合病”、“太陽、少陽、陽明の三陽の合病”がある。同時に病む。

自下利…下したために下痢するのではなく、また邪毒が胃腸内に侵入したために下痢するのでもなく、合病のために下痢する。

<解>

太陽病と陽明病の合病で、太陽病の症状(脈浮、頭項強痛、悪寒)と、陽明病の症状(腹満、不大便、うわ言、悪熱、潮熱、しゅう然として汗出ずなど)の中でいくつかが錯綜してあらわれてくる。自下利は太陽病にも陽明病にもみられない症状だが、合病になった結果あらわれる症状なので強調して挙げてある。

流行性感冒の下痢の初期に葛根湯を用いるのはこの章の活用。

第二十章 葛根湯加半夏湯

太陽與陽明合病、不下利、但嘔者、葛根湯加半夏湯主之。

たいようとようめいのごうびょう、げりせず、ただおうするものは、かっこんとうかはんげとうこれをつかさどる。

太陽病と陽明病の合病のとき、下痢せず、嘔吐する者は、葛根湯加半夏湯が主治である。

<構成生薬> 葛根湯加半夏湯=葛根、麻黄、甘草、芍薬、桂枝、生姜、大棗、半夏

<解>

汗として出ずべき病邪が、上に迫って嘔吐するものは、葛根湯に半夏を加えてこれに応ずる。

第二十一章 葛根黄連黄芩甘草湯

太陽病、桂枝證、醫反下之、利遂不止、喘而汗出者、葛根黄連黄芩甘草湯主之。

たいようびょう、けいしのしょう、い かえってこれをくだし、り ついにやまず、ぜんしてあせいずるものは、かっこんおうれんおうごんかんぞうとう これをつかさどる。

太陽病の中の桂枝湯の証で、医者ともあろうものがこれを下し、そのためにひきつづいて下痢が止まらなくなった。しかもその上に、喘して汗が出ないという症状もある。葛根黄連黄芩甘草湯の主治である。

<構成生薬> 葛根黄連黄芩甘草湯=葛根、黄連、黄芩、甘草

<言葉の意味>

…医の旧漢字。医者。わざわざ「医者が」と書かれているのは、「医者ともあろうものが」と強く批判している時である。

<解>

太陽病の中の桂枝湯の証は、下してはならない。医者が(医者ともあろうものが)これを下し、そのためにひきつづいて下痢が止まらなくなった。しかもその上に、喘して汗が出ないという症状もある。葛根黄連黄芩甘草湯の主治である。

(汗出て喘する 麻黄杏仁甘草石膏湯証と区別しなければならない)

第二十二章 麻黄湯

太陽病、頭痛発熱、身疼腰痛、骨節疼痛、悪風、無汗而喘者、麻黄湯主之。

たいようびょう、ずつう、ほつねつ、しんとう、ようつう、こつせつとうつう、おふう、あせなくしてぜんするものは、まおうとう これをつかさどる。

太陽病で、頭痛発熱し、からだが痛く、関節痛があり、悪風し、汗なく、咳が出るものは、麻黄湯が主治である。

<構成生薬>麻黄湯=麻黄、桂枝、甘草、杏仁

第二十三章 大青龍湯

太陽中風、脈浮緊、発熱悪寒、身疼痛、不汗出而煩躁者、大青龍湯主之。若脈微弱、汗出悪風者、不可服之。服之則厥逆、筋惕肉瞤。

たいようのちゅうふう、みゃく ふ きん、ほつねつおかん、み とうつう、あせいでずして はんそうするものは、だいせいりゅうとう これをつかさどる。もし みゃくびじゃく、あせいでおふうのものは、これをふくすべからず、これをふくすればすなわちけつぎゃくし、きんてきにくじゅんす。

太陽病の中風で、脈が浮緊、発熱悪寒があり、からだが痛く、(発汗剤を用いたが)汗が出ずに煩躁する者は、大青龍湯が主治である。もし脈が微弱で、汗が出て悪風する者は、これを服すべからず。これを服すればすなわち四肢が冷え、筋肉がぴくぴくと痙攣する。

<構成生薬>大青龍湯=麻黄、桂枝、甘草、杏仁、生姜、大棗、石膏

<言葉の意味>

不汗出…汗不出とは違う。「汗不出」は汗が出ないという意味。「不汗出」は、汗にし出でずとも読み、発汗せしめたが出ないという意味である。麻黄湯などの発汗剤を用いて発汗を図ったが汗が出ないという意味。

煩躁…煩は熱煩で、熱のために悶えるの意味。躁は手足をしきりに騒がしく動かして苦しむ状態である。

厥逆…四肢の厥冷の甚だしいこと。

筋惕肉瞤(きんてきにくじゅん)…筋肉がぴくぴくと痙攣する状態。

<解>

太陽の中風の劇症にして傷寒に類するものの証治をあげ、次の章では傷寒の変証にして中風に類するものをあげて臨機応変の治療を施すべきを教えたもの。

太陽の中風は、「脈浮緩にして発熱悪風汗出ず」を正証とし、桂枝湯が主治である。

ここでは、緩脈が緊に変わり、悪風は悪寒となり、身疼痛して、傷寒に類する状態となった。

以上の症状から判断すると、この場合は麻黄湯の証のように思える。そこで麻黄湯を与えたが、汗が出ずに、煩躁するようになった。発汗によって病邪を発散しようとしたが、表の熱実証がはげしくて、裏熱を伴っているので、裏熱を清解すると同時に表邪を発散しなければならない。そこで、裏熱を清解する効のある石膏が入る大青龍湯が必要となる。

体力の充実した人の流感や肺炎の初期。

結膜炎で炎症のはげしいとき。

第二十四章 大青龍湯

傷寒、脈浮緩、身不疼、但重、乍有輕時、大青龍湯主之。

しょうかん、みゃく ふかん、み いたまず、ただおもく、たちまちかるきときあり、だいせいりゅうとう これをつかさどる。

傷寒で、脈が浮緩で、からだの痛みはなくただ重く、その体の重さもたちまち軽くなるときがある、そのようなときは大青龍湯が主治である。

<解>

傷寒(発熱、悪寒あるいは悪風、汗なし)で、脈浮緊・身疼痛をうったえるべきであるところを、脈が浮緩でからだは痛まず、(太陽の中風に似ているが中風と違って)身が重い。(身重は少陽病、陽明病にもみられる症状だが少陽病や陽明病と違って)身重は、たちまち軽くなる時がある。(表証の身重である)大青龍湯の主治である。

第二十五章 小青竜湯

傷寒表不解、心下有水気、乾嘔発熱而欬、或渇、或利、或噎、或小便不利、少腹満、或喘者、小青龍湯主之。

しょうかん、ひょうげせず、しんかすいきあり、かんおう、ほつねつしてがいし、あるいはかっし、あるいはりし、あるいはいっし、あるいはしょうべんりせず、しょうふくまんし、あるいはぜんするものは、しょうせいりゅうとう これをつかさどる。

傷寒で、表邪がよくならず、心下に水気があり、乾嘔し、発熱して咳が出て、あるいはのどがかわき、あるいは下痢し、あるいはむせび、あるいは小便利せず、小腹満し、あるいは咳が出るものは、小青竜湯が主治である。

<構成生薬> 小青竜湯 =麻黄、芍薬、細辛、乾姜、甘草、桂枝、五味子、半夏

<言葉の意味>

表不解…表証が解消しないこと。

心下有水気…心下は、みぞおちである。心下に水気があるからとて、必ずしも心下部で振水音を証明するとは限らない。

利…下痢のこと。

…むせぶこと。

<臨床の眼>

大青龍湯は、表熱証で、裏に熱のあるもに用い、

小青竜湯は、表熱証で、裏に寒があるものに用いる。

小青竜湯は、気管支炎、気管支ぜんそくに用いる他に、浮腫に用いられることがある。せきのために顔に浮腫のあるもの。喘息の発作の時に、くしゃみをして水様の鼻汁が流れ、あるいは尿意をしきりに催す、これは心下の水気のためであり、小青竜湯を用いる目標となる。

第二十六章 小青竜湯

傷寒、心下有水気、欬而微喘、発熱不渇、小青竜湯主之。

しょうかん、しんかすいきあり、がいしてびぜん、ほつねつかっせず、しょうせいりゅうとうこれをつかさどる。

傷寒で、心下に水気があり、咳して少しぜーぜーし、発熱し、口渇がない、小青竜湯が主治である。

<構成生薬> 小青竜湯 =麻黄、芍薬、細辛、乾姜、甘草、桂枝、五味子、半夏

<解>

前章の「傷寒表不解、心下有水気」のうち、「表不解」が省略されている。

欬して微喘は、水飲の上逆のため。

口渇のないのは、心下に水飲が停滞しているからである

第二十七章 桂枝湯

太陽病、外証未解、脈浮弱者、當以汗解、宜桂枝湯。

たいようびょう、がいしょういまだげせず、みゃくふじゃくのものは、まさにあせをもってげすべし、けいしとうによろし。

太陽病で、外証がいまだ解せず、脈が浮、弱の者は、まさに汗をもって解すべし、桂枝湯に宜し。

<構成生薬> 桂枝湯 =桂枝、芍薬、甘草、生姜、大棗

<解>

表証と外証の違い。

太陽病で、外証たる頭痛、項痛、悪寒などの証がまだあり、脈が浮弱であれば、桂枝湯がよい。


第二十八章 桂枝加厚朴杏子湯

太陽病下之、微喘者、表未解故也、桂枝加厚朴杏子湯主之。

たいようびょう、これをくだし、びぜんのものは、ひょういまだげせざるがゆえなり、けいしかこうぼくきょうしとう これをつかさどる。

<構成生薬> 桂枝加厚朴杏子湯 =桂枝、甘草、生姜、芍薬、大棗、厚朴、杏仁 

=桂枝湯+厚朴、杏仁

<解>

太陽病で、表証もしくは外証のあるものは、まず表を治する。表邪をそのままにしておいて下剤で攻めることは禁忌。腹満、便秘などの下すべき証があっても、悪寒、発熱、頭痛などの表証があれば、まず桂枝湯を用いて表邪を散じ、そののちに下すべきである。

表邪を治せずして、先に裏を攻め下したために微喘を起こしたのである。この喘は腹満のためではなく、心下の水気のためでもなく、表邪のあるものを誤下し、そのため気が上逆して胸に迫って喘が生じる。桂枝湯に厚朴と杏仁を加えて表邪を散じ、上逆の気を収める。杏子は杏仁と同じ。

第二十九章 太陽と陽明の併病

太陽病、外証未解、不可下也、欲解下者、宜桂枝湯。

たいようびょう、がいしょういまだげせずんば、くだすべからざるなり、そとをげせんとほっするものは、けいしとうによろし。

太陽病、外証未だ解せざる者は、下すべからず。外を解せんと欲する者は、桂枝湯に宜し。

<解>太陽病と陽明病の併病を述べたもの。合病、併病の言葉が省略されていることがある。

太陽病にして、頭痛、悪寒などの外証がまだ去らず、他方で、すでに邪の一部が表を去って裏に入り、便秘や腹満などの証をあらわしているものは、太陽と陽明の併病であるから、先に裏を攻めて、これを下してはならない。桂枝湯を用いて外証が消えてからのちに、なお下すべき裏証があれば、改めの下せばよい。そのため、「之を主る」ではなく「宜し」としてある。

第三十章 

太陽病、脈浮緊、無汗発熱身疼痛、八九日不解、表証仍在、其人発煩目瞑、劇者必衂、麻黄湯主之。

たいようびょう、みゃくふきん、あせなくほつねつみとうつう、はちくにちげせず、ひょうしょうなおあり、そのひとはつぱん、もくめい、はげしきものはかならずじくす、まおうとうこれをつかさどる。

太陽病にかかって、八、九日もたっているのに、脈が浮緊で、汗なく、発熱し、身疼痛の症状が続いているのは、表証が続いているのであるから、麻黄湯で発汗すべきである。この際、麻黄湯を飲んで良くならずに、瞑眩をおこして苦しみ、めまいがし、激しい時は衂血(じっけつ)を出すことがある。

<言葉の意味>

発煩…煩悶を発すること。

目瞑…めまい。

衂血(じっけつ)…発汗と同じ意味。紅汗。鼻出血??調べ直します。

劇者必衂は、麻黄湯を服用したのちの変化であるから、之を主る、の次の置いて解釈する。傷寒論ではこのような筆法があちこちにある。

第三十一章 太陽と陽明の併病

二陽併病、太陽初得病時、発其汗、汗先出不徹、因轉属陽明、續自微汗出、不悪寒、如此可以小発汗。設面色縁縁正赤者、容器沸騰拂鬱、不得越、其人短気、但坐、更発汗則愈。

にようのへいびょう、たいようはじめやまいをえるのとき、そのあせをはっし、あせまずいでててっせず、よってようめいにてんぞくし、つづいておのずからすこしくあせいで、おかんせず、このごときはすこしくあせをはっすべし。もしめんしょくえんえんとしてせいせきのものは、ようきふつうつとしてこすをえず、そのひとたんき、ただざす、さらにあせをはっすればすなわちいゆ。

太陽と陽明の併病は、(合病と異なり)その初め、太陽病にかかったものが、その汗を発し、汗をまず出したが出し切れず、よって陽明に転属し、続いて自ずから少し汗が出て、悪寒はない。このようなときは汗を発すべきである。もし顔面が一面に赤く色づいているようなものは、表邪が肌表に鬱積して発散することができないためで、これも表証であるから下してはならない。その人は呼吸促進して、横になることができず、このような時は、さらに発汗させれば治る。

<処方の推測>桂麻各半湯、桂枝二麻黄一湯、桂枝二越婢一湯

<言葉の意味>

轉属……転じて属する。

不徹…徹は去の意味なので、「去らない」の意味。通徹せず、ということ。

正赤…ほかの色を交えないで赤い。

短気…呼吸促拍。

第三十二章

傷寒、脈浮緊、不発汗、因到衂者、麻黄湯主之。

しょうかん、みゃくふきん、あせをはっせず、よってじくにいたるものは、まおうとうこれをつかさどる。

傷寒で、脈が浮緊、汗を発せず、衂血をきたす者は、麻黄湯が主治である。

第三十三章

発汗後、身疼痛、脈沈遅者、桂枝加芍薬生姜各一両人参三両新加湯主之。

はっかんご、みとうつう、みゃくちんちのものは、けいしかしゃくやくしょうきょうかくいちりょうにんじんさんりょうしんかとうこれをつかさどる。

発汗後であるのに身疼痛が依然として残り、脈が沈遅の者は、桂枝加芍薬生姜各一両人参三両新加湯が主治である。

<構成生薬>桂枝加芍薬生姜各一両人参三両新加湯=桂枝、芍薬、甘草、人参、大棗、生姜

第三十四章 麻黄杏仁甘草石膏湯

発汗後、喘家、不可更行桂枝湯。汗出喘、無大熱者、可與麻黄杏仁甘草石膏湯

はっかんご、ぜんかには、さらにけいしとうをやるべからず。あせいでてぜんし、おおねつなきものは、まおうきょうにんかんぞうせっこうとうをあたうべし。

発汗後に、喘息のような人で体表の熱のない者には、さらに桂枝湯を与えるべからず。麻黄杏仁甘草石膏湯を与えるべし。

<構成生薬>麻黄杏仁甘草石膏湯=麻黄、杏仁、甘草、石膏

<言葉の意味>

喘家…喘息のような病気を持っている人。

大熱…高い熱という意味ではなく、裏熱に対して体表の熱を言ったもの。

<解>

発汗したために、発汗前からあった発熱、悪寒などの表証は消散したが、平素から喘鳴の癖のある人は、喘が残った。これには桂枝湯を与えてはならない。表証はすでに解し、裏熱のために「汗出でて喘する」ようになった。

<似ている処方>

 五虎湯=麻黄、杏仁、甘草、石膏、桑白皮

第三十五章 桂枝甘草湯

発汗過多、其人叉手自冒心、心下悸、欲得按者、桂枝甘草湯主之。

はっかんかた、そのひとてをくんで、みずからしんをおおい、しんかきし、あんをえんとほっするものは、けいしかんぞうとうこれをつかさどる。

発汗し過ぎたために、心悸亢進が起こり、手を組んで心臓部を圧迫して心下の悸をしずめんとする者は、桂枝甘草湯の主治である。

<構成生薬>桂枝甘草湯=桂枝、甘草

第三十六章 奔豚

発汗後、其人臍下悸者、欲作奔豚、茯苓桂枝甘草大棗湯主之。

はっかんご、そのひとせいかきするものは、ほんとんをなさんとほっす、ぶくりょうけいしかんぞうたいそうとうこれをつかさどる。

発汗したところ、臍の下で動悸が激しくなり、奔豚という病になろうとするとき、茯苓桂枝甘草大棗湯の主治である。

<言葉の意味>

奔豚(ほんとん)…ヒステリー、神経症。

<構成生薬>茯苓桂枝甘草大棗湯=茯苓、桂枝、甘草、大棗=苓桂甘棗湯

第三十七章

発汗後、腹脹満者、厚朴生姜半夏甘草人参湯主之。

はっかんご、ふくちょうまんのものは、こうぼくしょうきょうはんげかんぞうにんじんとうこれをつかさどる。

発汗後に腹部の膨満する者は、厚朴生姜半夏甘草人参湯の主治である。

<構成生薬> 厚朴生姜半夏甘草人参湯=厚朴、生姜、半夏、甘草、人参

第三十八章 苓桂朮甘湯

傷寒、若吐若下後、心下逆満、気上衝胸、起則頭眩、脈沈緊、発汗則動經、身為振振搖、茯苓桂枝白朮甘草湯主之。

しょうかん、もしくはとし、もしくはくだしてのち、しんかぎゃくまん、きのぼってむねをつき、おきればすなわちづげんし、みゃくちんきん、あせをはっすればすなわちけいをうごかし、みしんしんとしてようをなすものは、ぶくりょうけいしびゃくじゅつかんぞうとうこれをつかさどる。

傷寒を、吐かせたり、もしくは下したりして、(裏が虚し)、気が上逆して降りず、そのために、心下満をなし、気が胸に上衝し、起き上がればめまいが起こり(静かに寝ていればめまいしない)、脈が沈緊であるよう者は茯苓桂枝白朮甘草湯が主治であり、誤って発汗せしめると、血液の循環に変調をきたして、身体がふらふらと揺れるようになる。

<構成生薬> 茯苓桂枝白朮甘草湯=茯苓、桂枝、白朮、甘草=苓桂朮甘湯

<言葉の意味>

心下逆満…胃内の停水とガスの充満によって心下に逆上すること。

頭眩(づげん)…めまい。

第三十九章 

発汗、病不解、反悪寒者、芍薬甘草附子湯主之。

あせをはっしてやまいげせず、かえっておかんするものは、しゃくやくかんぞうぶしとうこれをつかさどる。

発汗して、(発汗して表証が去れば悪寒が止むべきであるのに)病解せず、(少陰病に転じてしまったために)かえって悪寒するものは、芍薬甘草附子湯の主治である。

<構成生薬> 芍薬甘草附子湯=芍薬、甘草、附子

第四十章 茯苓囘逆湯

発汗若下之、病仍不解、煩躁者、茯苓囘逆湯主之。

はっかんもしくはこれをくだし、やまいなおげせず、はんそうするものは、ぶくりょうかいぎゃくとうこれをつかさどる。

表証のあるものを発汗させ、もしくは裏証のあるものを下して、病が治らず、かえって煩躁するものは、茯苓囘逆湯の主治である。

<構成生薬> 茯苓囘逆湯=茯苓、人参、附子、甘草、乾姜

第四十一章 調胃承気湯

発汗後悪寒者、虚故也、不悪寒、但熱者、實也、當和胃気、與調胃承気湯

はっかんご、おかんするものは、きょするがゆえなり。おかんせず、ただねっするものはじつなり。まさにいきをわすべし、ちょういじょうきとうをあたう。

<構成生薬> 調胃承気湯=甘草、大黄、芒硝

第四十二章 五苓散

太陽病、発汗後、大汗出、胃中乾、煩躁不得眠、欲得飲水者、少少與飲之、令胃気和則愈。若脈浮、小便不利、微熱、消渇、大汗出、胃中乾、煩躁不得眠、欲得飲水者、少少與飲之、令胃気和則愈。若脈浮、小便不利、微熱、消渇者、五苓散主之。

たいようびょう、あせをはっしてのち、おおいにあせいで、いちゅうかわき、はんそうねむるをえず、みずをのむをえんとほっするものには、しょうしょうあたえてこれをのましめ、いきをしてわせしむればすなわちいゆ。もしみゃくふ、しょうべんりせず、びねつ、しょうかちのものは、ごれいさんこれをつかさどる。

<構成生薬> 五苓散=猪苓、沢瀉、白朮、茯苓、桂枝

第四十三章 五苓散

発汗已、脈浮数、煩渇者、五苓散主之。

あせをはっしおわって、みゃくふさく、はんかつのものは、ごれいさんこれをつかさどる。

発汗し終わって、脈がなお浮数で、ひどくのどのかわくものは、五苓散の主治である。

第四十四章 五苓散 茯苓甘草湯

傷寒汗出而渇者、五苓散主之。不渇者、茯苓甘草湯主之。

しょうかんあせいでてかっするものは、ごれいさんこれをつかさどる。かっせざるものは、ぶくりょうかんぞうとうこれをつかさどる。

<構成生薬> 五苓散=猪苓、沢瀉、白朮、茯苓、桂枝

茯苓甘草湯=茯苓、桂枝、甘草、生姜

第四十五章

中風、発熱六七日、不解而煩、渇欲飲水、水入口吐者、五苓散主之。

ちゅうふう、ほつねつろくしちにち、げせずしてはんし、かっしてみずをのむをほっし、みずくちにはいってはくものは、ごれいさんこれをつかさどる。

『臨床応用 傷寒論解説』 著:大塚敬節先生

この記事はまだ書きかけです。

第百八十二章まであります。

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